2025/06/09 23:59

はじめましてのひともそうでない方たちも、

hug coffeeと申します。

『スペシャルティコーヒーを広め、コーヒーで街をデザインする』を理念に、歩み続けてきた14年…

 

今改めて、足跡を記すとともにこれからの未来について尋ねてみた。

2011年3月11日

日本中を揺らした東日本大震災の日に、hug coffeeは始まりの日を迎えた。代表を務めるのは二人の幼馴染。清水に生まれ育ち、いつか静岡で面白いことをしたいと思い描いてきた。



代表 古閑大士 酒井隆介


二人に共通していることは、世界中を巡ってきたこと。その土地のカルチャーとともに、迎え入れられる面白さを体感してきた。

 

「迎えてもらえると嬉しい。僕たちもそういう思いを大切に、hug coffeeをやっていきたい」

 

「ふらりと訪れた先に面白い出会いがある。スペシャルティーコーヒーをきっかけに、窮屈な日々の希望であれたら」

スペシャルティコーヒーとは、甘さ、酸味、味わいなど一定の基準をクリアしたコーヒーをさす。品質を守りながら持続的に生産されるかなど、背景も重視される。

hug coffeeのコーヒーは、全てスペシャルティコーヒーのみ。西門町店に自家焙煎機を導入し、丁寧に焙煎をしている。


使う素材は、できるだけローカルの物を選ぶ。牛乳は富士山麓の朝霧高原のものを、ハチミツは地域の農家のものを使っている。

  

「小さな循環を繋いでいきたい。僕たちは一杯のコーヒーを通して、シチュエーションを提供しているんです」

「コーヒーじゃなかったら、こんなにたくさんの人と出会えなかったかもしれない」

と、話す古閑さんはもともとコーヒーが飲めなかった。

二十代半ば、偶然の出会いからスペシャルティコーヒーの美味しさを知ることとなる。きっかけは、後に修行先となったmanu coffeeを営む西岡さんが淹れてくれた一杯だった。

「こんなに美味しいものだったのかと、衝撃を受けました」

 コーヒーの世界へ、足を踏み入れた瞬間だった。

 「一杯のコーヒーを淹れる時間は約30秒。バリスタの30秒にかける人生ってかっこいいと思ったんです」

 古閑さんは福岡。酒井さんは沖縄。二つの地で飲食業に関わってきた二人は、三十歳を機に静岡で一号店をオープンする。その根にあるのは、地域密着型の店でありたいという想いだ。

影響を受けた街は、アメリカオレゴン州、ポートランド。山、海、川に囲まれた土地柄はどこか静岡を彷彿させる。オーガニックを大切にする食文化とともに地元の店が立ち並び、その地を愛した人々で賑わう。

 「静岡も地域を支えてきた商店が沢山ある。街に活気が生まれて面白い場所が増えていけば、もっと楽しくなると思う」

hug coffeeの店づくりは、街を知ることから始まる。まずは古地図と照らし合わせ、歴史との関係性を読み解いていく。

 

第一号店がある両替町は、徳川家康によって銀貨鋳造所が設置された歴史をもつ。店内にはヴィンテージ家具が並び、床にはゆずり受けた古材を使っている。

 

「地盤が固く、流通がいいところが魅力。この場所を訪れた人の足跡とともに育っていってほしい」


紺屋町店は、徳川慶喜公屋敷跡である浮月楼のすぐ近く。交差点横、コンパクトな立地をいかに活用していくか考えてつくられた。

 

「ポートランドで見つけた面白い店を参考に。気軽に集い、交わる場であれたら」


南町店は長年愛された純喫茶を引き継ぎ、懐かしさと新しさが同居する。

 「イメージは、ネオ純喫茶。リラックスできるように、ステンレスなど無機質な素材が見えないようにしています」



自家焙煎所がある西門町は、徳川秀忠を生んだお愛の方に縁が深い、宝台院の西門にあたることから由来された。これまで以上に、スペシャルティコーヒーの可能性を追求している。 

「他店舗よりも、コーヒーを核にしたメニューになっている。シンプルで奥深いコーヒーの世界を楽しんでもらえたら」